ドイツの古都 ドレスデンとアウグスト2世
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ドイツの古都ドレスデン。かってザクセン王国の首都として繁栄し、エルベ河のフィレンツェと謳われた美しい街並みは、第二次世界大戦で徹底的に破壊されましたが、不死鳥のように見事に甦り、私達に再び往時の美しさを教えてくれます。
ザクセン王国史上、最も有名な王はアウグスト2世(アウグスト強王・豪胆王と呼ばれています)です。アウグスト2世は華麗なドイツ・バロックのツヴィンガー宮殿、中国趣味のピルニッツ宮殿など、数々の美しい建造物を造営し、ザクセンを中欧の強国に押し上げました。
また神聖ローマ帝国の選帝侯としての名門の家系として育ち、深い教養を身につけた強王は、工芸品、美術品の収集にも熱心で、当時白い黄金と言われた景徳鎮、伊万里、柿右衛門の磁器を収集し、そのコレクションは世界一と言ってもいいでしょう。
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レジデンツ宮のマイセン磁器を使った君主の行列
△Mouse アウグスト2世 その後は3世
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磁器に関しては収集だけでは飽き足らず、錬金術師ベドガーをドレスデン近郊マイセンのアルブレヒト城に幽閉して研究させ、ヨーロッパ初の白い磁器を完成させます。マイセンは絵付師ヘロルト、彫刻家ケンドラーらの活躍により発展し、今日もヨーロッパ最高級磁器の名声を保っています。
これらの工芸品、美術品はツヴィンガー宮殿内の陶磁器博物館、レジデンツ宮(王宮)内の「緑の丸天井」で鑑賞することができます。
また後継者のアウグスト3世は絵画の収集に熱心で、有名なラファエロの「サンシストの聖母(システィーナのマドンナ)」を多額の資金で購入しています。ツヴィンガー宮殿内の古典絵画館(アルテ・マイスター)では、ラファエロの他にもレンブラント、フェルメール、ボッティチェリ、ジョルジョーネなどの名品が揃っており、ドレスデンはヨーロッパ屈指の美の殿堂となっています。
エルベ河沿いのドレスデン旧市街の美しい街並み
右手奥の豪華な建物はリヒャルト・シュトラウスが活躍したゼンパー・オーパー(王立歌劇場)
ブリュールのテラスより
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またドレスデンは音楽の都としても有名です。ツヴィンガー宮殿の隣にあるセンパー・オーパー(ゴットフィールト・ゼンパーが設計したオペラハウスで、現在の建物は二代目です)は新古典主義の豪華なオペラハウスで、リヒャルト・ワーグナーが楽劇「タンホイザー」を初演したことで知られています。リヒャルト・シュトラウスもここでオペラの名作「サロメ」、「エレクトラ」、「バラの騎士」を初演するなど、ドイツ・オペラ史上、重要な歌劇場です。
ドレスデンの象徴であった聖母教会(フラウエン・キルヒェ)は、創設当時市民の寄付とアウグスト3世の寄付により建てられました。第二次世界大戦の爆撃で破壊され、戦後は戦争の悲惨さの象徴として、長らく瓦礫の山として放置されていましたが、1994年に再建が始まり、瓦礫の山から一つ一つ石材のかけら(写真の黒い部分)を拾つて再利用するという気の遠くなる作業を経て、遂に2005年に完成しました。
再建された教会を眺めると、18世紀のベネツィアの画家、カナレットが描いた往時の美しいドレスデンの風景が甦ります。
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ツヴィンガー宮殿中庭 マイセンのカリオン前にて
△Mouse ツヴィンガー宮殿内の陶磁器博物館にて
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陶磁器博物館内の アウグスト3世騎馬像
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瓦礫の山から甦った 聖母教会(フラウエン・キルヒェ)
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